神谷浩史·万叶恋歌·樱之章【台本】

神谷浩史·万叶恋歌·樱之章【台本】
神谷浩史·万叶恋歌·樱之章【台本】

古くから多くの人に読まれ、愛され続けてきた万葉集。学校の授業で読んだことある?なに?よく覚えてないだって?まさか訳が難しいし、何て言ってるか分かんないって思ってる?安心しろ。これから始まる物語は万葉集の和歌を元に、現代風にアレンジした恋物語。だから、難しいのは苦手のお前でも大丈夫。俺が優しく教えてやるから。俺だけの声を聞いて。お前だけに囁こう。

HoneyBee CD Collection 万葉恋歌ー桜の章ー悠久の愛をお前とともに…

Track 02

「ふぅ~今日も疲れたなぁ~おっ?残業してたらもうこんな時間かぁ。道理で疲れてる訳だ。お~星が見える。綺麗だ~そう言えば、最近忙しくて星を見上げる暇もなかったなぁ~たまにはこんなのも悪くないかぁ~」

(ドン)「あっ、すいません!」

星明りのせいだろうか、ぶつかってきた人の表情がはっきりと見えた。

「ちょっと…余所見してて…怪我とかありませんでしたか?」

星明りに照らされたその姿に、一瞬で俺は彼女から目を離せなくなった。

「あぁ…大丈夫ならいいんです!本当に、俺の不注意ですから…」

彼女は謝りながらお辞儀をすると暗闇へと消えて行った…

「なんだ…この感じ?もっと話せばよかったと思うなんて…」

遠くなる彼女の後姿を見ながら、俺はいつまでもその場所に立ち尽くしていた。

『玉桙の道行かずあらばねもころのかかる恋には逢はざらましを』

偶然、道で見かけた貴方に一目惚れをしてしまうが…声をかけそびれてしまった。「フン、何でも万葉集の歌に譬えるのは俺の悪い癖だなぁ~ふぅ、仕方ないだろう~ずっと万葉集の研究をしてきたんだから。」

「さてと~もう寝るかぁ~」

布団に入ってゆっくり目を閉じる。今日の出来事を思い出すと、自然に眠気が増してくる気がするなぁ…

「まぁ~それだけ疲れてるってことかぁ~明日出勤したら、机の上の書類を片付けて、まだ途中の資料をまとめて…ほかは何をやればいいんだっけ?はぇ~」

家に帰っても自然と仕事のことを考えてしまう。そんな毎日の繰り返し。でも…今日は少し違う。そう、道でぶつかった彼女。

「ごめんなさい…かぁ~」

俺はたった一言「すいません」と言った。彼女も「ごめんなさい」と謝って、別れた。

「ほんの数秒の出来事だったなぁ~」

瞼の裏で彼女が俺に微笑みかける。見たことのない表情なのに、なぜか胸が急に苦しくなる。「はぁ~眠れねぇ~」

耳を塞いでギュッと目を瞑って、何度も寝返り打ったが…繰り返し彼女の笑顔が再生される。「はぁ~もう朝かぁ~ふぁ、やべぇ、会社行く時間だ。」

結局一晩中彼女の姿が頭から消えることはなかった。

『遠くあれば姿は見えず常のごと妹が笑まは面影にして』

目を閉じても貴方の姿ははっきりと浮かんでくる。

「最近、よく万葉集の歌を思い出すなぁ~ふう、学生時代にたくさん覚えたっけ?」

Track 04

その後、帰り道で何度か彼女とすれ違うことがあった。出逢った日と変わらず、彼女は足早に俺の横を通り過ぎて行く。時々目が合ったような気もしたが…結局はなにもなかった。それが余計に切なくて、俺は彼女が通り過ぎた後を振り返り、暗闇へと消えていく彼女の背中を何度も見送った。

仕事の帰り道。彼女が足元を必死に探っている姿が目に入った。思わず心配になり、後ろから声をかけた。

「あのう…何か探し物ですか。よかったら手伝いますよ。」

顔を上げた彼女と目が合った。彼女も俺のことを思い出したのか、「この間はすいません」と謝ってきた。

「いえ、大丈夫ですよ。それよりも、もう夜も遅いですし、探し物、早く見つかちゃいましょう。」

彼女は申し訳なさそうに「ピアスを片方落としてしまった」と告げた。二人で星明りを頼りにピアスを探した。必死な彼女を横目で見ながら、恋人からもらったものなのかと考え込んでしまう自分がいた。

その時だった。道の端で星明りに照らされて美しく輝く桜のチャームがついたピアスが目に入った。

「おっ、あった!探し物ってこれですか?」

拾ったピアスを彼女の手の平にのせると、彼女は嬉しそうに笑い、「ありがとう」と何度も言うと、去って行った。

彼女が見えなくなったとたん、俺は我に返って、その場に思わず座り込んでしまった。「うわっ!俺、顔、赤かったよなぁ…すっげぇ恥ずかしい…だって、まさか話してくれるとは思わなかった…しかも、手触っちゃった…すごい、ドキドキする…」

俺、彼女に、まさか…恋?!

「はぁ~バカだなぁ俺…こんなに胸が苦しくなるなら、自分の気持ちに気づかないで遠くで見ているだけにすればでよかった…きっと、あのピアスも恋人からのプレゼントなんだろうなぁ~」『かくばかり恋ひむものそと知らませば遠くそ見べくあらましものを』

恋がこんなにつらいものなら、遠くから貴方を見ているだけにすればよかった。昔覚えた句が頭の中に甦ってきた。まるでいまの自分の気持ちを代弁しているかのように…

Track05

「今日はさ、お前に相談があるんだ。いいかぁ?絶対に笑うなよ!真面目な話なんだけど…俺さ、恋しちゃったかも…」

俺は学生時代から一緒に万葉集の研究をしてきた友達に思い切って相談してみた。

「あっ、お前!いま笑ったろう!?俺が真面目に話してるのに!」

俺が怒ると、友人はようやく真剣に聞く気になったようだ。

「え?どうやって出逢ったかって?仕事帰りに、コンビニまで歩いてたんだよ…その時、女の人にぶつかって、突き飛ばしちゃって…手を貸した時にその人の顔見たら、なぜか目が離せなくなったんだ。って、ニヤニヤしながらこっちを見るな!恥ずかしいだろ!」

予想していたよりも、親身になって話を聞いてくれる友人に俺は思わず赤面してしまった。普段からあまり感情を表に出さない俺が、恋の話をするなんて…よっぽど珍しかったに違いない。「お前じゃなきゃ絶対こんな話できないからなぁ…周りの奴らにも絶対言うなよ!」『今のみの行事にはあらず古の人ぞまさりて哭にさへ泣きし』

恋に苦しんでいるのは貴方だけじゃない。

友人はわざとらしく声高らかに万葉集の一句を読み上げた。

「えーと、たしか昔の人も恋をして何度も涙を流してるって意味だよな?まあ俺は泣いてなんかないよ!俺はなぁ…彼女を見かけるだけでいいんだ。俺の気持ちが彼女に伝われなくてもいい…って、恥ずかしいこと言わせるな!」

Track 06

「ただいま~って、誰もいないよなぁ~」久しぶりに友達と会って、はしゃぎ過ぎてしまった。酔いが回っているせいか、足元が覚束ない。

「あ~今日はよく眠れそう~あいつも元気そうでよかった。また飲み会でも企画するかぁ~はぁ~昔の人も恋をして泣いてきているかぁ…」

彼女への気持ちに気づいても、俺は別に何かをするわけでもなく、以前と変わらない日々を

過ごしている。ただ…仕事が早く終わった時は必ず、あの道を通るようにしていた。道の向こうからやってくる彼女を見つけた時は、思わず振り返って彼女を見送る。それが最近の日課。「そういえば、今日は会えなかったなぁ~」

何をしていても、誰かと話していても、俺は彼女を一度も忘れたことはない。ただこの手が、心が、彼女をひたすらに求め続ける。

「好きだぁ…はぅ…声に出せば出すほど…」

『忘るやと物語してこころやり過ぐせど過ぎずなほ恋ひにけり』

気晴らしに友人と話したのに、ますます貴方への思いが募ってゆく。

Track07

「あっ、あの後姿…似てる!はあ~なんだ、違う人かぁ~」

いますれ違った人、彼女に似ていたなぁ。

(パッ)「痛っ!あっ、あぁすみません!大丈夫です!ぼーっとしていただけです…これ、まとめておけばいいんですよね?先輩の頼みならいつでも引き受けますよ~そんなに心配しないでください。俺はいつだって元気ですから。」

会社の廊下、社員食堂、毎日乗る電車、近所のコンビニ…ふと彼女がいるんじゃないか、どこかですれ違っているんじゃないかと、思わず探してしまう。

「また気のせいかぁ…」

でも…どんなに目を凝らしても、彼女を見つけることはできなかった。忙しい日が続き、もう随分と彼女と会っていなかった。彼女は今夜も一人、星明りの下を歩いているのだろうか。少しでも俺のことに気づいてくれていたなら…なんて思ってしまう自分を情けなく思ってしまう。「こんなにも人を好きになるなんて…」

彼女の姿を思い出すだけで、暖かくて、幸せで、切なくて、苦しくて…もし恋の病で死ぬことがあるなら、俺はもう…千回は死んでいるんじゃないか…

「そういえば、こんな歌が万葉集にあったなぁ~」

『思ふにし死にするものにあらませば千遍そわれは死にかへらまし』

恋焦がれて死ぬなら、私はもう千回死んでいる。

今夜もビルの窓から見える星たちに、彼女とまた会えるように祈る。

Track08

「あぁ~今日も疲れた~はぁ、一人で飲む酒がこんなにおいしくないなんて、初めてだ。」いますぐに会いたい。いますぐに抱きしめたい。自分の気持ちに気づいた時から、毎日会いたくてたまらなくて…どうしたらいいのか分からない…でも、いざ会ったら、まともに顔も見れない。俺ってかっこ悪いなぁ~最近の俺は四六時中こんなことばかり繰り返し繰り返し考えている。「はぁ~気晴らしにテレビでも見ようかなぁ~」

ぼんやりと見つめていると、ある人気女優がゲストとして出てきた。出演者に軽く会釈をし、その女優の笑顔がアップで映された瞬間、あの日見た彼女の顔と重なった。

「会いたいなぁ~」

いま彼女は何をしているんだろう。どこにいるんだろう。誰と一緒にいるんだろう。誰を思っているんだろう。聞きたくても聞けないことがたくさんある。

「俺って、こんなに臆病だったかぁ?駄目だ!酒もテレビも集中できない!へぇ~こんな日はもう寝よう。」

「おやすみなさい…って、誰もいないかぁ~」

その夜、夢の中に彼女が出てきた。俺の方に手を差し伸べて笑っている。彼女の手を取り、俺もつられて笑う。彼女の大きな瞳に俺が映っている。きっと俺の瞳の中にも彼女が映っているだろう…優しく幸せな果かない夢物語。

『相見ては面隠さるるものからに継ぎて見まくの欲しき君かも』

会えば恥ずかしくて顔も見れないが、できることならもっと貴方に会いたい。

これが現実になればいいのに…何度も何度も夢の中で祈った。

「はぁ~遅いなぁ~いつもこの時間に通るはずなんだけど…」

俺は彼女の通る時間にいつもの道へとやってきた。

「やばい…緊張してきた…」

会えない日が続くほどに、切ない思いは募っていた。彼女の笑顔を見たい。彼女の声を聞きたい。彼女を…この腕で抱きしめたい。そう思った時には足がこの場所に向かっていた。「あぁそろそろ通る時間だよな…」

時計に目をやると、彼女が通る時間に近づいてきた。やっぱりセリフとか考えてきた方がよかったか?

『下野安蘇の河原よ石踏まず空ゆと来ぬよ汝がこころ告れ』

貴方に会いたくて、空を飛ぶ気持ちできた。だから気持ちを聞かせてほしい。

この歌を読んだ人も、いまの俺と同じような気持ちだったのかなぁ…

暗闇の中からこつこつと足音が聞こえてくる。間違いない、彼女だ!

「こんばんは!あの…俺のこと、覚えていますか?ああ、あの、今日はどうしても言いたいことがあって…貴方を待っていました。話…聞いてくれませんか。あっ、ああの…す、好きです!俺と、付き合ってくれませんか?」

突然過ぎて、驚いたかもしれない。でもこの言葉が俺の気持ちのすべてだ。恐る恐る彼女の顔を覗くと、泣きそうな顔をした彼女と目が合った。でも、しっかりとした意志を宿したその瞳は俺をまっすぐ捕らえる。彼女は、こくんと頷いた。その瞬間、俺は彼女の手を取り、自分の胸元に引き寄せた。

「絶対、大事にするから。」

俺はいつまでもいつまでも、星明りの下、彼女を抱きしめていた。

「はぅ~今日もいい天気だ!せっかく二人で出かけるんだから、やっぱり天気がいいほうが気持ちいいよなぁ~行ってきます!」いま俺は彼女と付き合っていて、これからデートの待ち合わせ場所に向かう。足取りがとても軽く感じる。

「待ち合わせまでには、まだ時間があるなぁ~」

前に遅刻してしまったことがあった。あの時は本当に申し訳ないことをしたなぁ…

「そうだ!いいこと思いついた~今日は寄り道しないで、早めに行って驚かせてやろう!」俺が早く行ったら、どんな顔するんだろう。ドキドキする。いつだって彼女に会う時は緊張する。いまはまだ慣れないけど、いつか普通になる日が来るのかなぁ。

『待つらむに至らば妹が嬉しみと笑まむ姿を行きて早見む』

待ち合わせ場所に早く行って、嬉しそうな貴方の顔が見たい。歌の意味を噛み締めながら、俺は待ち合わせ場所へと走り出した。好きな人を思う気持ちは今も昔も変わらない。早く会いたい。

Track 11

「しっかし、本当にこの店好きだよなぁ~」

お気に入りのカフェテラスで街行く人を二人で眺める。

「最近疲れてるみたいだったから、心配してたんだぞ。ふ、でも、元気そうな顔見て安心した。俺も、お前と話してると元気が出るよ。ん?最近仕事で何かあったかって?いや、別に何もないけど…はぁそういえば、彼女できたって同僚の子に聞かれたなぁ~女の勘ってすごいよなぁ~ええ?なんて答えたかって?いや、別に…関係ないだろう?おっ、おい、なんで急に拗ねるんだよ~ええ?教えてくれないから?それは…なんかちょっと恥ずかしくてさぁ~俺、自分のこと言うのに苦手で…ごめんな。えっ?許すからなんて答えたか教えてって?それは、正直にはいって答えたよ。そんなにまじまじと見つめるなよ~まだ彼女って呼ぶのに慣れてないんだってば…いまだにお前と会う時は、いつも緊張するし…周りの人間にいろ

いろ聞かれるのも、恥ずかしいんだよ…っあ、なに一人でにやにやしてるんだよ!え?彼女って言ってくれて嬉しいって?なんか…こういうのって照れるよなぁ…でも、お前の拗ねた顔が見れたから、いいかなぁ~なんて。えへ大丈夫、拗ねた顔も可愛いよ~」

『妹と言はば無礼し恐ししかすがに懸けまく欲しき言にあるかも』

Track 12

「うん?写真落としたよ。」

拾った写真に目をやると、そこには丸くなって気持ちよさそうに眠る一匹の猫が映っていた。「猫?どうしたんだこれ?飼ってるの?」

何度も「可愛いでしょ」と自慢されると、俺は猫にさえ嫉妬してしまう。

「そんなに可愛い猫なら、ぜひ会わせてよ。実は俺も結構猫好きなんだよ。」

その次の休日、俺はお土産の猫缶が入ったコンビニ袋を揺らしながら、家へと向かっていた。(ディン·ドン) (にゃあ~)

「あは~おとなしいなぁ~抱っこされても嫌がらないんだぁ~可愛いなぁ~写真で見るよりも丸々として毛並みも綺麗だなぁ~」

猫は俺と目が合ったかと思うと、部屋の奥へと消えていった。俺の大人げない嫉妬に気づいたからかもしれない。なんて勘のいい猫なんだ!

「行っちゃったなぁ…俺のこと怖かったのかなぁ~なんて。ごめん。もう少しだけこのままでもいい?猫だけずるい。」

『うつたへにまがきの姿見まく欲り行かむと言へや君を見にこそ』

「あなたの庭が見たい」と言ったのは、貴方に会いたかったから。

俺の場合は猫だったけど…今度はあの猫とも仲良くなれたらいいなぁ~

Track13

駅前で待ち合わせをしているが、今日はあいにくの雨。心なしか目の前を通り過ぎる人もいつもの休日に比べて少なく感じる。

「雨って、なんか気分も滅入るよなぁ~遅いなぁ…何かあったのかなぁ…いつも俺より早く着いてるのに…」

メールも電話も一向に来る気配はない。電車が遅れているのだろうか…出かける時になにかあったのか?それとも…いやな予感が頭の中を駆け巡る。

「落ち着かないなぁ…やっぱりもう一回電話してみるか。…あ?おい!大丈夫かぁ?随分濡れてるじゃないか?まったく、お前に何かあったら俺…えっ、なんでもない!もっとこっち来いよ!傘、どうした?なに?途中で傘が壊れた?まったく…どじなんだから…今日はもうデート中止。その代わり、俺が髪の毛乾かしてやるから。そんな顔すんなよ~たまには二人でゆっくりするのも悪くないだろ?」

『見わたしの近き渡をたもとほり今か来ますと恋ひつつぞ居る』

ときめきと不安を持って、待ち合わせ場所になかなか来ない貴方を待つ。

待ち合わせの相手が来た時の嬉しさは不安な気持ちの分だけ喜びに変わる。昔からそれは一緒なんだなぁ~

Track14

「あ?この甘い匂い…もうしかしてチョコレート?エプロン姿可愛いなぁ~こうやってるとまるで新婚みたいじゃないかぁ~あっ、ふう~落ち着け、俺!明日はバレンタインデーかぁ…ふぅ~まったく、職場の人に配れーとか言って、俺はほっといたままかよ…」

「なぁ~俺さ、お腹減ったなぁ~え?いま忙しいって?ったく、いつもならすぐ隣に来てごめんねって謝ってくれるのに…はぁ~なんか憂鬱な気分…俺さ、昔バレンタインに持って帰れないくらいのチョコを貰ったことあるんだ~トラック二台分くらい!すごいだろう?って分かりやすく嘘をついてんのに返事なしかよ…ふん~俺も大人げないけど、ちょっとくらいやきもち妬いてくれたっていいじゃないかぁ…」

「お前が俺の分のチョコは作ってくれないって言うから、自分で作りに来ました。って、なに怒ってんだよ?なに?さっきの話のこと?へぇ~まったく、お前は~早くお前が俺の分作

ってくれないとチョコの代わりにお前食べちゃうぞ~っは、ははは~はぁ、顔真っ赤!って、俺もだよなぁ…え?本当はこれ俺の?ふっ、じゃあ~もう我慢できないから、味見だけしていい?勘違いするなよ!俺はチョコの味見がしたいだけなんだからな。」

『恋ひ恋ひて逢へる時だにうるはしき言尽くしてよ長くと思はば』

会えた時は私にたくさん「好き」と言ってほしい、長く一緒にいたいなら。やきもちを妬いてくれるお前も、本当は嫌いじゃないんだけどなぁ~女心はよく分からないよ~

Track15

「ん~あは…もう朝かぁ…おはよう~って、まだ寝てるかぁ…仕方ないなぁ~ほら、ちゃんと布団かけて寝ないと風邪引くだろう。寝てる時は本当に幸せそうな顔してるなぁ~楽しい夢でも見てるのか?そんな幸せそうな顔見せられたら、起こす気になれないだろ?ったく~」「昨日お前の帰りが遅くて不安になっちゃって、思わず怒ってごめんな。バカだよなぁ…俺。お前が浮気なんてするわけないのに…仕事が忙しくて連絡できなかったことも知ってるよ。疲れてるところに不安な思いさせて悪かったなぁ…お前はこんな俺と一緒にいて、楽しいか?全然彼氏らしいことしてやれないし…でも、本当は俺も不安なんだ…お前に嫌われたくなくて…だから、しょっちゅう気持ちを試すようなこと言って…俺ってバカだよなぁ~お前に嫌われたくなくて、必死になってる…でも…お前がいやだって言っても絶対…誰にも渡さない!お前は俺だけのもの!」

「おっ、起きたのか?おはよう。もうしかして…いまのを聞いてた?聞いてない?だったら別になんでもない…本当になんでもないって…さて~俺はそろそろ起きて、お寝坊さんのために久しぶりに朝ご飯でも作ってやろうかなぁ~お前の好きなオムレツ作ってやるから、早く起きてこいよ~」

『朝に日に見まく欲りするその玉をいかにせばかも手ゆ離れざらむ』

貴方を大切に思い、自分だけのものにしたい。

「俺って、こんなに独占欲強かったっけ?へへ~しかし、寝顔可愛かったなぁ~」

Track 16

『梓弓弦緒とりはけ引く人は後のこころを知る人そ引く』

永遠の愛を誓う言葉は、私のように簡単に心変わりのしない人が言うべきものだ。

俺は絶対に…心変わりなんてしない。だからもっと、俺のことを信じてくれないか。

「なぁ~さっき見た映画どう思った?最後のシーン感動したって?俺はあんまり好きな映画じゃなかったなぁ~え?何でかって?うん~主人公の男が最後ヒロインに結婚してほしいって言うシーン、あそこが納得いかなかった。へぇ?あそこが一番泣けるシーンだって?ええ~俺は主人公の男がさらりと結婚してほしいって言うのがいやだったなぁ~よく考えてみろよ。そんなにすぐ結婚してほしいって言えるものなのか?俺だったら、結婚してほしいって簡単には言えないなぁ~それが、好きな相手ならなおさらに…でも、軽くその言葉を使わない代わりに、俺は結婚する人を絶対大切にできる自信がある。世界で一番大切にする。」「なんだよ~人の顔じっと見て…お前、俺のいま言ったこと信じてないだろう?でもいつか言ってやるから覚悟しとけよ~その時はどんな映画よりもドラマよりも感動させる!だから待っててくれよな~」

Track17

「付き合ってから今日でもう一年かぁ~お前と出会ってから本当にいろいろあったなぁ~二人で海に行ったり、遊園地にも行ったなぁ~あとは水族館、映画もよく見に行ったし…一年前、俺がお前の帰り道を狙って告白した時のことを、まだ覚えてるか?あの時俺はお前に振られると思ってた。俺、いままで一目惚れなんてしたことなかったし…自分から告白するなんて、初めての経験でどうしたらいいのか分からなかった…だけど、お前は俺を選んでくれた。あの時、俺を選んでくれなければ、いままでこんなに楽しい日々は過ごせなかった。今日だけは言わせてくれ。普段は言えないことをたくさん言うから、ちゃんと聞いておけよ~」「本当にありがとう。お前がいたから、どんな時でも笑って楽しく過ごせた。喧嘩することも、泣かせるようなこともあったけど…それは、お前がいてくれたから、出来たことなんだ

と思う。一年前の俺に教えてやりたい!いま、幸せだって。」

「おっ、おい~泣くなよ~本当に涙脆いなぁ~でも、そんなところも好きだ。大好きだ。お前の泣き顔も、笑顔も、毎日見ていたって絶対に飽きない自信がある。だから、これからもずっと、傍にいてくれよな。」

『朝月の日向黄揚櫛旧りぬれど何しか君が見れど飽かざらむ』

付き合いは長いが、貴方を見つめることに飽きた日はない。

「今日よりも明日、明日よりも明後日。そうやってもっともっとお前のことを好きになれる。この気持ちのまま、ずっといつまでも…

Track18

「あれ?俺、いつの間に寝てた?ごめんな、一緒にいるのに…ん?仕事が忙しくて疲れてるんでしょうって?バカ~そんなの全然大丈夫だって、心配するな~でも…久しぶりに夢を見てたんだ~夢の中でぼんやり立ってると、後ろの方から聞き慣れた声がする。振り返

ると煉瓦作りの小さな可愛らしい家が建ってた。近づいて行ったら、ドアが開いてお前が出てきたんだ。お帰りって、笑顔で…すごく暖かくて幸せな夢だった。あっ、恥ずかしい話しちゃったなぁ…俺、やっぱり仕事で疲れてるのかも~」

「ん?いつか実現できたらいいねって?なんかこういうの照れるなぁ…夢の話なんて人にしたことなかったから…ほかの人には言うなよ、俺とお前だけの秘密な~でもいつか、本当にそうなったらいいなぁ~」

「はぁ~お前も、一緒に昼ねしよう~今度は同じ夢見てるように…」

『人も無き国もあらぬか吾妹子と携ひ行きて副ひて居らむ』

誰も知らない場所で貴方と一緒に静かに暮らしたい。

体温を感じながら、そっと眠りにつく。きっとこの句を読んだ人もそんな暖かい気持ちだったのだろう。

Track19

「もう桜も終わりかなぁ~一週間前はちょうど咲き始めて綺麗だったんだけど…ええ?俺の仕事が忙しくてなかなか予定が合わなかったから仕方ないって?でもお前だって同じだろう?まったくほら、またすぐにそうやって拗ねる~でも俺は、満開の時よりも散る時のほうが好きだなぁ~なんでかって?それは桜って散るからこそ美しいと思うから。永遠なんてないけど、俺が生まれる前よりもずっと昔から同じ場所で毎年同じように綺麗な花を咲かせていると思うと、ロマンチックじゃないか?だから~今日お前と一緒に同じ桜を見れてよかった~」「実は、お前に渡したいものがあるんだ。受け取ってくれるか?はい~桜の花びら。さっきお前と会う前に、たくさん拾っておいたんだ。きれいだろう?あ、風が吹いてきたなぁ~風で花びらが飛んでいく…」

「指輪、見えるか?お前を驚かそうと思って、桜の花びらの下に隠しておいたんだ。渡すのが遅くなってごめんな。その代わり、よく見て。指輪に桜の柄が入ってるんだ。お前の好きな花だろ?いまお前の目に映る桜の花びら一枚一枚に、お前への愛を込めても足りな

いくらいだ。これから一生をかけて、お前に全部伝えたい。一分一秒、お前が瞬きをする瞬間もないくらいに…もう、俺が言いたいこと、分かるよな?ほら~左手、出して。」

『この花の一よの内に百種の言そ隠れるおほろかにすな』

世界中の愛を込めて、いま貴方に桜を贈る。

「昔の人は桜を贈ったけれど、俺は将来の幸せを誓って、この指輪をお前に贈るよ。絶対に幸せにする。だから…俺と結婚してください!」

Track20

「そろそろ準備できたか?」

「ああ…ごめん!思わずウェディングドレス姿に見とれてた…え?似合うかって?似合うよ…世界で一番綺麗だ。誰にも見せたくないくらいに…なんだ?緊張してるのか?大丈夫~これからなにが起こっても、誰も俺たちを引き裂くことはできない。もし俺たちが離れ離れ

になるとしたら、世界が終わる時だけ。その日が来るまでは、俺たちはずっと一緒だ…」「余計に緊張してきたって?お前には俺がいるだろ?だから安心しろ。お前が笑う時は俺も笑う。そしたら楽しさは二倍だ。お前が泣く時は一緒に泣こう。お前の泣き顔が誰にも見られないように抱きしめよう。ほら~笑顔笑顔~せっかく綺麗な格好をしてるのに、緊張してたら台無しだぞ!と、もうそろそろ教会に行く時間から…バージンロードで待ってるから~(チュ) 早く来いよ。」

『天地といふ名の絶えてあらばこそ汝とわれと逢ふことを止まめ』

世界が滅びる日が来ても、貴方と私はずっと一緒だ。

この思いを胸に抱きしめて、君の傍に居続けよう。いつまでも…いつまでも…

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