日本经济

４．大所高所から経済を見ると

マクロ経済学では、家計?企業?政府の活動を、経済指標などを用いて包括的に捉える

●マクロ経済学とは

ミクロ経済学は、個人や企業の個別の行動を分析するものです。これに対し、一国の経済を大きな視点から見て全体像を捉えようとするのがマクロの視点です。

この視点から経済を論じるのがマクロ経済学で、一国の経済を、個人の総体である家計部門、個別企業の総体である企業部門、および政府部門の3つの主体による活動と捉え、経済活動の姿をできるだけ包括的に見ていきます。

それぞれの経済主体の活動を見るには、物価上昇率や失業率、経済成長率、国際収支など様々な経済指標のうごきを捉え、経済理論に照らして分析することが有用になります。

マクロ経済学の性格上、使用する指標は主に集計的な数字で表され、それらの経済指標というモノサジを使うことによって、個々の経済主体や一国全体の経済動向を、数量的に捉えることができるのです。

●日本政府?日銀は経済全体の調整役

経済活動の中で、それぞれの経済主体は相互に影響を及ぼし合っています。マクロ経済において、日本政府や日本銀行は、失業率を押さえたり物価を安定させるなど、一国全体の経済を良好な状態に導くための調整役となります。日本政府や日銀は、適切な財政?金融政策を通じて、企業や家計などの民間の経済活動を促進させるのですが、その際に国全体の経済の現状を正確に把握する必要があります。そのような全体を捉えるという点で、このマクロの視点は特に重要になります。

たとえば、景気が後退期にあると判断すれば、公共投資の追加や公定歩合などの政策金利の引き下げといった政策をとります。逆に、景気が過熱して大幅な物価の上昇を招くと予想されるときには、政策金利を引き下げることになります。

財政?金融政策をより効果のあるものにするためにも、景気の局面とその原因を正確、かつ早期に分析するのが、マクロ経済学の仕事といえるでしょう。

●政策選択の余地が減少

日本は近年で、国?地方の借金の合計が、莫大な金額になっています。こうした厳しい状況の中では、財政政策として、日本政府が国債を発行して、さらなる公共投資や減税を行う余地g多少なくなってしまいます。現在、政府に求められるのは、投資先を精査し、国の将来にプラスになるような財政政策をとることといえるでしょう。

また、金融政策を担当する日本銀行としても、政策の選択の余地が少なくなってきています。日本銀行の政策手段としては、公定歩合の操作やコールレートの誘導などがありますが、金利がほぼゼロの現在では、これ以上の緩和は非常に困難です。

こうような中で日本銀行は、金融政策の操作目標を、金利から資金の供給量、具体的には、日本銀行当座預金残高に移しています。

５経済のフローとストックとは

国富はストック、GDPはフローの概念はあたる

●フローとストックの概念

経済活動には、フローとストックという２つの概念があります。この二つヲ混同して経済を見ると、思わぬ混乱が生じることにもなりますので注意が必要です。

フローとは、１年や１か月といった限られた期間に発生するもので、一定期間内の経済活動の成果を表します。一方、ストックとは、ある時点からある時点までの間に積み上がった累積的な残高です。したがって、フローの積み重ねがストックといってもいいでしょう。

●国富と国内総生産

一国の経済活動を見る上で、代表的な指標となるのが、国富と国内総生産です。

国富とは、ある時点に一国が保有する過去から蓄積された富の合計であり、ストックの概念にあたります。

国富には、ある時点で存在する、道路や橋といった社会資本、企業の生産設備や土地などといった実物資産のほか、対外純資産が含まれます。

過去の生産によってどれだけのストックが蓄えられ、現在も利用可能なのか、また、現在のストック水準は、将来期待される経済の姿に対して、過少なのが過大なのかを把握して、その量を適宜調整していくことが重要です。

国内総生産とは、ある年に作られた道路や橋といった政府の投資や、個人の消費、企業の投資などのように、一定の期間に生み出された財やサービスの需要の合計で、フローの概念にあたります。

たとえば、大洪水で橋が流されたとしましょう。このときストックである国富からは、失った橋の分だけ確実に富がなくなってしまいますが、国内総生産にとっては、マイナスの影響ばかりではありません。

橋が使えないことで物流や生産活動が滞れば、その機会ロスに分だけのフローが失われ、国内総生産にもマイナスの影響が出ますが、橋を再建する際に新たな建設投資が行われれば、その分がフローに計上されるため、国内総生産にはプラスの効果をもたらすことになるからです。

６?ＧＤＰ、ＧＮIとは

生活実感に近い形で経済規模を表すには、ＧＤＰのほうが適当

●ＧＤＰとは生産付加価値の合計

ＧＤＰ（国内総生産）とは、「国内である一定期間（四半期または一年）に、新たに生産された財とサービスの付加価値の合計」です。

この中の付加価値とは、生産から原材料などの中間投入を差し引いたもので、新たに生み出された価値の増加分を指します。

GDPは、その規模もさることながら、それぞれの期間で比べたとき、どれ

だけ成長したかということにも注目が集まります。

その理由としては、日本の経済システムは、右肩上りの経済成長を前提として設計されたものが多く存在するからです。たとえば、不動産を保証とした融資に偏っていた金融システムや年功序列の雇用制度、年金制度などがそれにあたります。

ところが、経済がほぼゼロ成長となった今日では、このようなシステムにも、綻びが目立ち始めています。

ＧＤＰなどの経済指標を見る際に、物価変動を調整しない名目値と調整する実質値の見方があり、今日のように名目経済成長率が名目金利よりも低いときには、国が抱える巨額の財政赤字は拡大しやすくなり、財政破綻の可能性が高まることになります。

●ＧＤＰとＧＮIの違い

現代では、企業もグローバルに展開しており、日本人も世界中に進出する一方で、日本にも多くの外国の企業が入ってきています。その国際化の流れの中で，従来、ＧＮＰと呼ばれていた国民総生産は、ＧＮI（国民総所得）と名称

を変えました。

GDPが国内で生産された付加価値の合計であるのに対して、ＧＮIは国民が生産した付加価値の合計を意味しています。つまり、経済を国境で区切って見るか、国民で区切って見るかの違いといえます。

要素所得とは、国民によって所有されている労働や資本が受け取るべき所得ということです。たとえば、日本の居住者が海外に債券投資した際の利息収入や、国境を越えて働いた賃金所得が街当します。

したがって、外国にいる日本人が生産した付加価値（海外からの要素所得受取）はGDPにはカウントされませんが、ＧＮIにはカウントされます。逆に、日本にいる外国人が生産した付加価値（海外への要素所得支払）はGDPには

カウントされるのに対して、ＧＮIにはカウントされません。

GDPとＧＮIは、似た概念ではありますが、私たちに関わる経済に規模を生活実感により近い形で把握しようとする場合には、GDPのほうが適している

といえるでしょう。

７．本当の豊かさを表す指標とは

市場を通さず生活の質に関わる活動は、ＧＤＰには含まれない

●ＧＤＰの限界

これまで見てきたように、経済の規模を見る場合、最もよく使われる指標がＧＤＰです。日本のＧＤＰは、世界第２位の規模を維持していますが、実際、それほどの豊かさを感じているでしょうか。

ＧＤＰというのはあくまでも、市場取引の対象となっているものを数値で表現した経済規模ということにすぎません。逆に言うと、市場で取引されない活動は、ＧＤＰには含まれません。

たとえば、レストランで食事をした場合には、調理師や給仕のサービスはＧＤＰにカウントされますが、主婦が家族のために食事を作っても、その手間はＧＤＰにはカウントされません。

このように、同等の行為でありながら、場合よってＧＤＰに計上されたり計上されなかったりするのです。

またＧＤＰは、住宅の住み心地や通勤事情、あるいは社会環境や自然環境のように、豊かさやゆとりといった、生活に質に関わる事柄は考慮されていません。そのため、ＧＤＰで測った経済規模の大きさが必ずしも豊かさを表しているものではないのです。

●GDPを補う試み

本当の豊かさを表す指標を作ることは容易ではありませんが、GDPでは捉えきれない、すなわち、市場で取引されない質的な要素を考慮して、GDPを補おうとする試みがなされています。

たとえば、公害や交通事故による損害な度を考慮した純国民福祉（ＮＮＷ）や、経済活動に伴う自然資産の悪化額ともいうべき帰属環境費用を、国民純生産から控除したグリーンGDPなどの開発が行われています。

もっとも、非市場取引や生活の質を計ることは、何をもって「豊か」とするかという、人それぞれの価値観に関わるものですから、一つの指標だけですべてを計ることはそもそも不可能です。それぞれの指標の限界を考慮に入れて、豊かさを測る物差しとするべきでしょう。