大正文学

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東京においては、震災において下町が江戸時代の街並みを 失う一方、震災の影響が総じて尐なかった丸の内、大手町 地区にエレベーターの付いたビルディングの建設が相次ぎ、 一大オフィス街が成立した。新宿、渋谷を単なる盛り場から 「副都心」へと成長させた。 大正7年（1918年）に大学令と高等学校令が公布されて高 等教育機関が整備されて、東京帝大の卒業生の半数が民 間企業に就職するようになり、「サラリーマン」が大衆の主人 公となった。明治時代まで呉服屋であった老舗が次々に「百 貨店」に変身を遂げ、銀座はデパート街へと変貌した。
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朝日入社から三部作へ 明治40年（1907年）2月、一切の教 職を辞し、池辺三山に請われて朝日新聞社に入社。同年 6 月、職業作家としての初めての作品「虞美人草」の連載を開 始。執筆途中に、神経衰弱や胃病に苦しめられる。彼の作 品はすべて朝日新聞に掲載された。「夢十夜」「三四郎」をた て、「それから」以後、漱石は初期の作風から次第に実存的 関心を深め、エゴイズムの問題を中心主題とするようになる。 彼は「自己本位」を唱えはしたが、常に「我執」のみにくさに おびえた点で「自我」の主張を旗印とする自然主義と対立し た。続いて発表した「門」は「三四郎」「それから」とともに三 部作と呼ばれる。
大正文学
目录
時代の背景文学の特徴
文学流派
大正時代の代表的な作家と作品
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大正文学 時代の社会背景と文学の特徴
大正時代 1912-1926 大正元年（1912年）：辛亥革命によって清朝が崩壊し、中華民国が成立。 大正2年（1913年）：大正政変 大正3年（1914年）：シーメンス事件、第一次世界大戦勃発 大正6年（1917年）：ロシア革命 大正7年（1918年）：シベリア出兵、米騒動 大正8年（1919年）：パリ講和会議、選挙法改正 大正9年（1920年）：国際連盟設立、尼港事件 大正10年（1921年）：原敬首相東京駅で暗殺 大正11年（1922年）：ワシントン会議 大正12年（1923年）：関東大震災、『国民精神作興ニ関スル詔書』発布 大正13年（1924年）：排日移民法が米国連邦議会で成立 大正14年（1925年）：治安維持法制定、普通選挙法 大正15年（1926年）：12月25日大正天皇崩御、昭和に改元
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大正2年（1913年）は、神経衰弱、胃潰瘍で6月ごろまで悩まされる。大正 3年（1914年）9月、4度目の胃潰瘍で病臥。作品は人間のエゴイズムを 追い求めていき、後期三部作と呼ばれる『彼岸過迄』『行人』『こゝろ』へ と繋がっていく。大正4年（1915年）3月、京都へ旅行し、そこで5度目の胃 潰瘍 辰野隆の結婚式に出席して後の12月9日、大内出血を起こし「明暗」執 筆途中に死去（50歳）。最期の言葉は、寝間着の胸をはだけながら叫ん だ「ここにみずをかけてくれ、死ぬと困るから」であったという。漱石の死 の翌日、遺体は東京帝国大学医学部解剖室において長與又郎によって 解剖される。その際に摘出された脳と胃は寄贈された。脳は、現在もエ タノールに漬けられた状態で東京大学医学部に保管されている。重さは 1,425グラムであった。
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松山落ち 1895年漱石は大学院在籍のまま勤めていた東 京高師の英語教師を突然辞任して、愛媛県尋常中学校（松 山中学）の英語教師となった。松山にいたわずか一年の間 に『坊っちゃん』の素材を得た。 イギリス留学 明治33年（1900年）5月、文部省より英語研 究のため（英文学の研究ではない）英国留学を命ぜられる。 しかし、日本と西洋との違いを痛感した漱石は自分の研究 の意味を疑い、留学費の不足や孤独感なども手伝って、最 悪の神経症に陥った。そのうわさは文部省に伝わり、子規 死去の報を受けた年、帰朝の途についた。
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漱石は早くから漢籍に親しみ、漢学塾二松学舎で学ぶなど、 漱石文学の骨格たる儒教的倫理観や東洋的美意識がその 青尐年時代を通して育成されていった。 大学に行くには英語の学力が必須の条件だったので成立学 舎で英語を学び、17歳で大学予備門に入った。1888年英文 学専攻を決意して第一高等中学本科に進学する。同級に正 岡子規がおり、その漢詩文集を漢文で評して、「漱石」と号し た。漱石の名は、唐代の『晋書』にある故事「漱石枕流」（石 に漱〔くちすす〕ぎ流れに枕す）から取ったもので、負け惜し みの強いこと、変わり者の例えである。子規と親交を結ぶ。 文学的・人間的影響を与える23歳で東京帝国大学英文科 に入学するが、このころから厭世主義に陥り、大学院へと進 んだ頃には強度の神経衰弱にとらわれ始める。
自然主義の暗さから自我尊重の明るい方向へ道を新しく見 出した「白樺」派であったが、その非現実的な理想主義がむ なしい感じを与え始めたとき、もっと現実主義的な個人主義 の文学が現れた。これを一般に「新現実主義」と呼んでいる。 東京帝大系の同人雑誌「新思潮」によった芥川龍之介、久 米正雄、菊池寛、山本有三ら。
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大正末期、民主主義と社会主義思想が発展するとともに、 工業化、都市化も発展してきた。文壇にもプロ文学と新感覚 派文学が発展してきた。
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夏目漱石 1867－1916反自然主義
近代人のエゴイズムの追求 高い教養と鋭い批判精神で人々を感化。 晩年は「則天去私」の境地を志向。鴎外と双璧をなす。
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修善寺の大患 明治43年（1910年）『門』を執筆途中に胃潰 瘍で胃腸病院（長與胃腸病院）に入院。同年8月門下の松根 東洋城の勧めで伊豆の修善寺に出かけ転地療養する。しか しそこで胃疾になり、800gにも及ぶ大吐血をおこし、生死の 間を彷徨う危篤状態に陥る。これが「修善寺の大患」と呼ば れる事件である。この時の一時的な「死」を体験したことは、 その後の作品に影響を与えることとなった。最晩年の漱石 は「則天去私」を理想としていたが、この時の心境を表したも のではないかと言われる。 「則天去私」 小さな私を去って、自然にゆだねて生きること。 宗教的な悟りを意味すると考えられている。創作上作家の 小主観を挟まない無私の芸術を意味したものだとする見方 もある
意識において、社会主義思想が一応発展してきた。 1911年
1918年米騒動
1922年日本共産党成立
科学技術において、欧米の技術を導入し、文化の方面でも 欧米文化と融合する。
1903年 東京浅草 初めての映画館
1908年東京 三越デパート
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文学の特徴
大正時代に入ってから、白樺文学、耽美派文学、新思潮文 学は次第に出てきたが、自然主義文学は衰退して、私小説 へと変わった。 大正期に入って安定した活動を見せた永井荷風や谷崎潤 一郎らの耽美的傾向と、また步者小路実篤、志賀直哉、有 島步郎らの「白樺」派の自我尊重、生命主義の傾向。
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大正天皇の治世を指しているが、後世では大正デモクラシ ー(日本で1910年代から1920年代にかけて（概ね大正年間 ）に起こった、政治・社会・文化の各方面における民主主義、 自由主義的な運動、風潮、思潮の総称である)に基づいた安 定期として見られることが多い。第二次世界大戦前の日本 における転換期に当たる。
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作家漱石の誕生 1903年東京へ戻った漱石は東大に迎え られ、「文学論」などを講義した。漱石の周辺には熊本以来 の寺田寅彦をはじめ、鈴木三重吉らの門下生が集まった。 のちにはこの会合は「木曜会」と呼ばれ、芥川龍之介、久米 正雄なども参加した。1905年漱石は高浜虚子のすすめで、 句誌「ホトトギス」に発表した「吾輩は猫である」が大評判を 取り、続いて『倫敦塔』を発表した。『坊っちゃん』『草枕』など。 この時期の作品には人生を余裕をもって眺めようとする傾 向「低回趣味」が強く、しゃれたユーモアや美的世界に遊ぼ うとする姿勢は「余裕派」とよばれ、当時主流の自然主義に 対抗することになった。
日露戦争頃から、当時の経済文化の中心地であった大阪・ 神戸において都市を背景にした大衆文化が成立し（阪神間 モダニズム）、全国へ波及した。今日に続く日本人の生活様 式もこの時代にルーツが求められるものが多い。
大阪・神戸は関東大震災（大正12年）後に東京から文化人 の移住等もあって、文化的に更なる隆盛をみた。
この時期の世界は、第一次世界大戦が起こった時期でもあ り、大正年間を通じて都市に享楽的な文化が生まれる反面、 スラムの形成、民衆騒擾の発生、労働争議の激化など社会 的な矛盾が深まっていった。
大正12年（1923年）に関東大震災が起こり、首都が壊滅的 な打撃を受けた。
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第一次世界大戦の勃発でイギリスがドイツに宣戦すると、日 英同盟を理由にドイツに宣戦し、中国における青島、山東省、 南洋諸島の一部を占領した。ついで大戦のためヨーロッパ 諸国が中国問題に介入する余力のないのを利用して、1915 年（大正4年）に袁世凱政府に、加藤高明外相が二十一か条 の要求を提出した。 発生直後こそは世界的規模への拡大に対する混乱から一 時恐慌寸前にまで陥ったが、やがて戦火に揺れたヨーロッ パの列強各国に代わり日本と米国両新興国家が物資の生 産拠点として貿易を加速させ、日本経済は空前の好景気と なり、大きく経済を発展させた。多数の「成金」が出現する。
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「大阪朝日新聞」、「大阪毎日新聞」が100万部を突破して東 京に進出、それに対抗した読売新聞も成長を果たして、今 日「三大紙」といわれるようになる新聞業界の基礎が築かれ た。 大正14年（1925年）3月には、東京、大阪、名古屋でラジオ放 送が始まり、新しいメディアが社会に刺激を与えるようにな る。 都市部では新たに登場した中産階級を中心に“洋食”が広 まり「カフェ」「レストラン」が成長、飲食店のあり方に変革をも たらした。 明治時代まで庶民には縁のなかった「欧米式美容室」、「ダ ンスホール」が都市では珍しい存在ではなくなり、男性の洋 装が当たり前になったのもこの時代である。一方、地方（特 に農漁村）ではそういった近代的な文化の恩恵を受けること Page 8 はまれで、都市と地方の格差は拡大していった。